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小説『精霊の守り人』 について

今日は上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』について語りたいと思います。

 

いわゆる守り人シリーズの記念すべき1作目です。老練な女用心棒バルサが、新ヨゴ皇国の妃から皇子チャグムを託され、精霊の卵を巡る戦いに挑む話です。最近では実写の連続ドラマがありましたね。アニメ化もされていて、知名度はかなり高いですね。

 

先住民の伝承や新ヨゴ皇国の建国の裏側などの世界観構築が上手い。(著者は文化人類学者)しかも戦闘描写が細かく、分かりやすい。ライトノベルによくあるスピードで勝負するのではなく、槍を返す手首の動きのような細かいところをイメージさせてくれる。多人数と相対するバルサの短槍さばきは、ゆらめく炎のように、静かな心の高鳴りを呼んでくれる。

 

一番の魅力と思ったのが、なんといっても女用心棒のバルサの頼もしさ。30歳の女性でありながら凄腕の用心棒として知られつつ、姉御肌な性格と時折見せる優しい一面に惚れてしまう読者も多いのでは? カッコイイお姉さんです。皇子チャグムとのコンビはとても微笑ましく見えます。30代女性が主人公のファンタジーってちょっと珍しくて好き。

他にも、バルサの幼馴染のタンダや呪術師のトロガイなど、個性の強いキャラクターが多い。バルサを狙う敵の目線も描かれていて、しっかりとこの世界に生きているのです

 

よく世界観の素晴らしさだけを書く人が多いですが、戦闘シーンや情緒ある情景描写、キャラクターの魅力……総合的な美しさがシリーズ化を支えた一番の理由ではないでしょうか。批判的に言えば、世界観を過大評価し過ぎている人もいるのでは? とも考えてしまう。もちろん素晴らしいのですが、この作品においての魅力を一つのテーマで語るのは難しい。ストーリーがシンプルで分かりやすいから論点にする意味は薄れていますが、リアリティ・ファンタジー・キャラクターの個性を詰め込んでいて、しかし小説ならではの表現というよりも、それらの良さを宝箱のように封じ込めるために文章を使っているように見える……だからこそ、「小説だからこそ!」という物語には思えない。アニメーションにしても違和感の少ない作品かもしれない。総じて、読者層の広い、様々なメディアで表現されるべきものとなっている、と私は考えています。悪いこととかではなく、事実そうではないかと。さらに評価される可能性が今もなお、こうして広がっているのが何よりの証ではないでしょうか。

 

小説に慣れていないお子さん、ファンタジーを遠慮していた方、読みやすいものを探している方にはオススメしたいです。また、自然を活かした文章や民族料理のシーンもあるから、自然や日常のシーンを書きたい、初心者の書き手様も参考になるのでは。

小学生の頃、読書感想文に坊ちゃんを選びましたが、読みやすいし、精霊の守り人がもう少し早く出たら選んでたでしょうね(

 

シリーズ化されているので、続編の感想なども今後書くかもです。

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