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『中世ヨーロッパを生きる』 スラスラと読める! 様々なアプローチによる研究をまとめた一冊

中世ヨーロッパが好きな人はたくさんいますが、気軽に調べられる資料となると、見つけるのに苦労します。いつも研究している人からすれば簡単だろうけど、ある作品や、海外旅行などで魅力を知った人にとって、長い歴史から入っていくことは難しい。私もそのように感じ、最初は楽しんで調べることが出来ませんでした。

 

ドキドキしながら、いろんな中世ヨーロッパの姿を見るきっかけにしたい! 今回はそうした人にオススメの一冊を。

 

中世ヨーロッパを生きる

中世ヨーロッパを生きる

 

 特徴

教科書のような、堅く、順序に従って書いているものではありません。それぞれの執筆者が、自分たちの専門に沿って調べた中世ヨーロッパを書いており、様々なアプローチ――森と人との関係、城のつくり、水車の権利、食事におけるフォーク誕生秘話、子と母の関係といった生活から歴史まで扱う。

 

中世の興味を開く入口がたくさんある

歴史が分からない人でも、食事のマナーやフォークの誕生秘話は面白いでしょう。城のつくりはファンタジー好きにとって一度は目を通しておきたいところ。森や水車がどういう立場にあったかも、中世の人々の暮らし方がよく分かるきっかけになります。

興味を持って調べるということはドキドキワクワクするということ。体感的に読める資料を私は大切にしています。この一冊は、様々な人を中世の世界へ誘います。一気に読んだ私は、既に中世世界で暮らしている気分になりました。

 

中世の暮らしをまとめている点が魅力

中世ヨーロッパと聞くと、私はとんでもなく広大な大地をイメージしてしまいます。歴史という大きな枠で見ると、イベントが多すぎて、それが目印となっていく。しかし、今までの歴史を築いたのは、むしろイベントというより小さな考えや出来事の積み重ね。人々の生活にあるということも事実です。

以下、私がこの本で初めて知ったドキドキすることを少しだけ引用させていただきます。

37p 恵みの森 より

ロンドンの北方および西方地域では「豚二〇〇頭の森」といったように、森の大きさがそこで飼養することのできる豚の頭数で換算されています。

 

56p 鉄と森

ディーンの森は、純度の高い赤鉄鉱を産出しました。獅子心王の異名をとるリチャード一世(在位一一八九~九九年)は、十字軍遠征のために五万個もの蹄鉄をこの森に発注したといわれています。

 (ディーンの森はハリーポッターにも登場した古代森林)

 

78p 横型水車の意味するもの より

クニャゲの横型水車は、生産規模の点でかなり大型な例です。〔中略〕横型水車には、建設費も維持費も安価だという大きな長所がありました。

 

127p フォークの登場 より

フォークは、一一世紀にビザンツから西方に到着しました。恐らく最初は、サービスのための道具(大皿から小皿に移すときの)でした。〔中略〕フォークはしばらくはパスタ圏にとどまり、一六世紀後半まで、北方イタリアでは、存在しなかったようです。

 

 こうしてばらばらに引用すると、人によって興味が出てくるポイントが違うとも言えますね。私は中世ヨーロッパの森について大きな興味を持つことができました。

 私は小説資料として使いますから、騎士道物語などの類より、こうした生活を調べる機会が多く、難しいテーマでもあります。そんな人にも調べるきっかけになると思いますね。

 

今の私達と比較する?

より奥深く調べるのでしたら、それをタイトルに据えたものを選ぶのが良いでしょう。ただ、様々なものを取り上げるということは、その時代の全体像――この作品で言えば、中世ヨーロッパの生活が全体的に分かりやすいものになるということです。本の冒頭に書かれておりますが、今の私達の暮らしがどのようなものか、中世と比べてみるのは中々面白いものです。

 

スラスラと読め、人々の生活を体感したい。そんな人に是非オススメできる一冊です。