想像力を教えてくれた『赤毛のアン』について
芸術家にとどまらず、様々な人が想像力を持って、日々を暮らしていますね。でも、想像力って当たり前のようでいて、様々な種類があり、難しいことだと私は思います。
想像力ってこんなに大切で温かいのだなと教えてもらったのが、『赤毛のアン』でした。
- 作者: ルーシー・モード・モンゴメリー,掛川恭子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/15
- メディア: 文庫
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それにしても、私のブログはファンタジー作品の紹介ブログである。これって関係あるのかなと言われれば、あまりありません。あまりありません。
でも、ファンタジー作品は想像力で左右され、世界観が決定される。その源である想像力を学んだ作品が『赤毛のアン』であることは間違いない。
<ザックリあらすじ>
舞台はプリンスエドワード島。間違いで老兄妹に引き取られることになった孤児のアン。想像力がとても豊かなアン。そしてとってもおしゃべり。大人を困らせてしまうが、子どもからの評判は良く、すぐ友達をつくる。緑豊かな自然と共に彼女は成長し、時には悲しいことも乗り越え、明るく日々を過ごす。
<見守ってあげたくなる赤毛のアン>
友達の中で一番お喋りな人を思い浮かべましょう。アンはそれらのやや上を行くと思います。流れるようなセリフと勢いは、読み始めた人の一部をイライラさせてしまうかもしれない。
しかし、躾をしようとする大人より一枚上手な口上や、子どもの急病を救うほどの行動力、さらっと友達を作ってしまう愛情深さと、一つの喧嘩でながーい憎しみを抱いてしまう素直なところ。見守っているうちに、読者はアンのことが好きになってくる。まわりの登場人物だって同じようにアンを好きになる。読んだ人にしか分からない温かさが、ゆっくりと増してゆく。
<自然豊かな地、プリンスエドワード島>
どの訳の本もそれぞれに味があると思います。そして、文章を読むと、自然のかおりを感じることが出来ます。アンが想像力を働かせて考えた名前――「雪の女王」、「喜びの白い道」、「恋人の小径」などなど、読んだ人の心の中でずっと生きているに違いない。
モデルとなった場所はカナダのプリンスエドワード島。自然に恵まれており、シーフードが美味しいとか。
赤毛のアンでも40種以上の植物が登場したと記憶していますが、まさにその通り、プリンスエドワード島は花と木々に愛されています。この前に紹介した本でも、その美しい光景が紹介されていました。
「グリーンゲイブルズ」は今も島にあります。アンの家が建っており、観光スポットとなっています。モンゴメリーもよく遊びにいっていたとか。
<友達に会いたくなる>
アンが宿命の友と呼ぶ、マシュー。ずっとアンを支えてきてくれたマリラ、一番の友達でいてくれるダイアナ、なんだかんだでアンを認めているリンドおばさん。素直で明るいアンを中心に、とてもうらやましい、人と人とのつながりがそこにあります。
「わたしが、もともともらうつもりだった男の子だったらよかったのにね」結構な年齢であるのに働きすぎているマシューに向かって、アンがそう言います。アンは偶然に引き取られただけで、当初は働き手として男の子をもらうはずでした。
マシューはこう言います。
「その、なんだ、男の子が1ダースいるより、おまえひとりのほうがいいよ、アン」マシューがアンの手をとって、やさしくなでた。「よく覚えておおき――男の子が1ダースかかっても、おまえにはかなわないんだよ。その、なんだ、エイブリー奨学金をもらったのは、確か、男の子じゃなかったろう? 女の子だったよ。うちの子だ。わしの自慢の、うちの子だよ」
口下手で人見知りで女性と話せないマシュー。宝物のような言葉を隠していました。
<未来を照らしてくれる想像力>
アンは暗い絶望へ放り込まれることがあっても、立ち直ります。子どもの想像力が、時に大人を驚かせるように、アンは幾つかの試練を想像力を働かせて、勝利するのです。
想像力とは、新しいものをつくる力と同時に、目の前の美しいものを改めて見直すことでもあります。アンは、満足とはとても言えない境遇でも、想像力で未来を見つめていました。そして想像の世界だけであった素晴らしい人生を歩み始めた時、今度は目の前の美しい自然と人々に対して、想像力を働かせます。アンは一人の大人として、素晴らしい想像力を駆使する魅力ある女性となったのです。
私はファンタジー小説の物書きとして、彼女のような想像力を大切にしたいと思いましたね。