メガザックリ資料 水車について
中世のヨーロッパでは、18世紀の蒸気機関が登場するまで貴重な原動機となっている。
ローマで既に完成形に近いものが発案。しかしローマというより、ヨーロッパで普及され、改良されていった。水車はヨーロッパの一つの顔である。
主な水車の役割
麦を製粉する臼を回す。主にこれが仕事である。
工業の動力
水を汲み上げる(水汲み水車)
高炉に使われた水車
森林の開拓が行われた大開墾時代。16世紀くらいから燃料不足となる。理由は製鉄所の木炭の消費だ。
木炭高炉というものがある。木炭と鉄鉱石を高炉の中に入れて燃やす。水車でふいごを動かし、風を送り込むことで高熱を得ることが出来た。水車よりも安定して動く原動機がなかったとも言える。
木炭高炉は深刻な森林破壊を生んだ。そこで石炭を蒸し焼きにして作ったコークスを燃料にすることで何とか解決する。その後、天候に左右される水車は蒸気機関(ワットの回転式蒸気機関)にバトンタッチした。それまでは山の川の近くに製鉄所を設けていた。水車は今こそレトロであるが、偉大な存在と言える?
いろいろな水車
船水車、潮力水車とあるが、もっぱら川のほとりにある。
上射式水車、中射式水車、下射式水車
一般的なイメージ通り。流水を受ける部分による分類。上射式はエネルギーある。下射式は一定の水で回る。
横型水車
日本では馴染みのない横型。歯車を介さず、水車の軸が臼の軸となっている。横型から縦型へ移ったとされるが、歯車式よりも安価に作れるため、劣化ではないと思われる。
畜力揚水車水車
牛やロバなどの家畜を使って回転運動を起こす→水車の回転に変えて揚水する。
バナリテの存在
バナリテとは、ヨーロッパにおいて、領主が市民に強制使用をさせること。水車はバナリテの制度が根強かった。領主や教会は堂々と製粉し、税金を貰う。隠れて、簡易的な製粉機で粉にする人も多かったとか。
挙げられる理由として、以前に紹介した本『中世ヨーロッパを生きる』では、水車の建設が市民にとって大規模であることと、河川利用税による統制があったことの2つがあるとのこと。
水車は確かに、イメージよりも複雑で巨大。また、川に人工的な段差を付ける必要もある。これに市民が手を出すより、領主がそれを建造させて、税金を貰うことは自然な流れに思える。
河川利用税は、領主が国に払う税だろう。水車の数はとても多く、他に川を使う利用者に影響が出る。そのため、河川利用税を設けて統制する。水車をつくることは色々な事情を抱えることでもあった。
農民が払う水車の税金は、平均にして穀物の16分の1。
『狼と香辛料』の4巻では、粉ひき係の青年が登場する。昔の税金の知識を持っていれば、説明文より先に「大変だねえ、それは」と思うだろう。セルバンテスの書いた『ドン・キホーテ』の粉ひき小屋の番人は、悪魔と間違われて攻撃される。農民の憎しみがよく伝わる。