勇気を考えるファンタジー『ブレイブストーリー』 映画とは全く違うよ!
食わず嫌いなところがあって、読んでいないけど有名な作品がかなりあります。その一つが『ブレイブストーリー』でした。
とはいえ、読み終わったのは一年以上前になりますが。お伝えしたい点は、最初に映画を観てしまったために読むのが遅れてしまったことです……いえ、それは私のせいで、映画も映画で楽しかったとは補足しておきます(
<映画と原作はかなり違う>
作画・映像などには詳しくありませんので、特に違和感はありません。とても美しいと記憶しています。ですが! 映画の印象は原作とはまるで別物でした。
映画ではかなりスッキリとした、分かりやすい内容にまとまっています。父が家を出て、心労によって倒れてしまった母。その全てを取り戻すため、ワタルはビジョンと呼ばれる別世界へ旅立つことになります。
ワタルの動機が家族にあるということで、家族の事情や、それを取り巻く環境によって少年の背負う荷物の重さが変わってくるというもの。ですが原作とは違って、あらすじにまとまる程度の環境しか分からず、平凡な少年のイメージがそのまま旅をしている、というような奥行きの無さが私には感じられました。
原作には、友達に対する気持ちと、経済による差別、家族の様々な形、少年としてのプライドなどなど、そこには言葉通りの少年ではなく、三谷亘という少年像がしっかりと刻まれていると思います。ああ、宮部みゆきだなと、誰だお前と言われるくらい上から目線の感想が口から出ました。あの人っぽい。
他にも、ビジョンの世界ではカットされている場所や変更点がとても多い。2時間でまとめることが難しいことは承知の上ですが、当然、観る人にとって関係のないことです。
<小説とは良いものだと素直に思った>
いわゆる異世界ものは、私達の世界と異世界を比べることに大きなポイントがあるのでしょう。また、私達と同じ現代で生きている主人公は共感しやすい、というのも加えさせていただきます。
ブレイブストーリーにおける異世界、ビジョンはワタルの影響下にあるため、人物や争い事は現実世界の問題と似ている。比較し、共感していくことが特に重視される話だと思います。そうだとしたら、きっちりと映像で見せるより、文章表現の方が評価できると考えています。長編ですが、後半にやってくる人物像の生々しさは、文章表現ならでは、と思います。
<ファンタジー映画って一体どう評価すればいいんだろう>
ここまで書きましたが、私は基本的に設定が変わっても許容します。私とは逆で、映画で興味を持って小説を買う人の方が多いでしょう。実際、映画版もとても楽しく観たことは事実です。
一つ困ったことが、ファンタジー映画に対する評価ですね。
制作の難易度が現実的に難しい。また、小説の表現を映画が完全に再現することは不可能だと思いますので、メディア毎に違った楽しみ方がある。私はメディアを越えてファンタジー作品を考えていく使命(?)がある為、これは大きな課題となるでしょう。
<この作品をまだ読んでいない人へ>
映画とはかなり違い、人物像も異なります。奥深さを求めるのなら小説がオススメ。
現実と異世界が深く繋がりあっていて、ただ別世界へ向かう、という内容ではない。
長編ということもあり、ビジョンの世界は緻密に書かれている。
世界観には触れていないため、また続きを書くかもしれません。その時はまたよろしくお願いします。