『MONSTERHUNTER ―魂を継ぐ者―』 魅力あるキャラクターと世界観 その1
モンスターハンターは、今では有名なゲームタイトルとなりました。タイトル通り、モンスターを狩るハンターを操作し、時に村を守り、時に街を守り、時に防具や武器を集めることに専念します。素材を手に入れるために何回も狩ったり、タイムアタックに挑戦したり……
モンスターの生態の設定は細かいのですが、あまりこのゲームにはストーリー性がありません。RPGではありませんからね。それでも、ゲームが作り出した世界観に魅了される人は多いはず。ハンターがハンターである理由も、人それぞれですから、それだけ幅があり、想像力が膨らみます。
今回は、そうした魅力的な世界観を掘り下げたノベライズ版のお話です。いろいろなシリーズが今も出版されていますが、私が好きな作品は魂を継ぐ者シリーズです。
このシリーズは、家族愛や人としての成長が大きなテーマとなっています。主人公のキオは村を守り亡くなってしまった凄腕のハンターであった父を目標に、まだ発展途上にあるジャンボ村の村付きハンターになります。
たくさんのモンスターを狩ろうと頑張ります。しかしそれはとても危ない行動です。何といってもモンスターですからね。恐竜みたいなのが無数に潜んでいる場所ですから、新人のハンターが努力でどうなるものでもありません。ゲームの世界ではありませんから、命は一つしかありません。
失敗を重ねる中、キオはクルトアイズと呼ばれるガンナーに出会います。彼は正式なキオの師匠となります。
キオの父はその実力から、罠などを駆使せず、自らの武器でモンスターと戦っていました。しかし、クルトアイズはしっかりと計画を練り、罠を使います。まだ幼さの残るキオにはクルトアイズのやり方が気に食わず、それがきっかけで一巻の後半で事件が起こります。
キオはクルトアイズに振り回され、クルトアイズもまた、無鉄砲なキオに振り回されます。一巻ではキオ目線でしたが、クルトアイズの苦労をキオがよく分かるようになるのは、読者も含めて、かなり先となります。未熟なキオも、クルトアイズのように師匠となる時がやってくるのです。
登場するハンターはそれぞれがこの世界で大切なものを守り、狩りの考え方に至るまでハンターの生き方がしっかりと描写されています。ノベライズ版の長所である世界観の描写がここで活きてくるのです。
地名くらいしか情報の載っていないゲームと違い、地理の関係や、モンスターの生息地域なども説明されています。特に第四巻では、空の王者と呼ばれるリオレウスをあえて狩らず、違う場所へ向かうまで行商人が待っているという話が聞けます。砂漠の狩場へ向かうのに何日も費やす為、苦労していることも描写されています。自然と共に生きている、というメッセージ性が強い。
また、このシリーズは一巻ごとに3年ほどの月日が経ち、ちっちゃかったキオがああなったり、こうなったりします。ジャンボ村は成長を続け、あることをきっかけに最終巻ではキオが村を離れます。モンスターハンターとは、人の暮らしを守り、自然もまた守るもの。世界は広く、過酷な場所で生活する人々はたくさんいて、キオはあえてそうした辛い場所へ向かうのです。そこにはゲームでは味わえない愛があります。
人との関わりも愛に溢れ、ライバルのロッシィ、可憐だが怒らせると怖そうなエーデリカ、キオに弟子入り志願するミモリなど、キャラクターそれぞれに良いところを持ち、健やかに成長する。クルトアイズ→キオ→ミモリと師匠が移り変わるその過程は、ハンターの魂が繋がってゆく美しさがあります。
ゲームから小説へ移行する作品はあまり好んで読みませんが、だからこそこのシリーズは思い出に残りました。ゲームが苦手だけど世界観が気になる方、ゲームで世界観が気に入った方にオススメするシリーズです。
次回に紹介する際は、もう少し詳しく世界観などを書きたいなと思います。